予察注意報によれば、県下全域で7月下旬(山間地は8月上旬)まで多発が予想されるとのことです。
早速お客様から発生状況の調査を依頼されたので、沼津市の愛鷹山麓まで出かけてきました。
愛鷹山麓の茶園は、駿河湾を望む南斜面で景色がとても良い場所に位置してます。
茶の樹が所々で枯れているのがわかりますが、これがクワシロカイガラムシの被害状況です。
茶の畝の中を覗いてみると。
上の写真のように白いカイガラが茶樹の幹に多数付着しています。
このカイガラの中にクワシロカイガラムシの雌成虫が生息していて、茶の樹液を吸っています。
下側の写真は雄成虫の繭で、この時期は既に脱出した後です。
この雄繭が目立つので「クワシロカイガラがたくさん出ている!」と言うことになりますが、実際に茶の樹に大きな被害を及ぼすのは上の写真にある雌成虫です。
この雌成虫が寄生した枝を、ほ場のあちこちから切ってきて実態顕微鏡で産卵や孵化状況を確認します。
こんな20倍程度の実態顕微鏡で充分観察ができます。
茶の樹の表面には、
こんな感じでクワシロカイガラムシの雌成虫が寄生してます。
この白いカイガラを剥がすと、
オレンジ色の雌成虫と卵、それから時期になると卵から孵化した幼虫が歩いているのが確認できます。
この幼虫が付近を歩き回り、やがて定着して分泌物を吐き出してカイガラを被ります。
アプロードエースやスプラサイドの散布適期がこの幼虫の歩いている時期と言われるのは、カイガラを被ると薬剤が到達しにくくなり効果が低下するためです。
上の写真の小判型をしたのが定着間際の幼虫です。
この時期に薬剤を散布すれば高い効果が得られます。
さて、顕微鏡の下ではクワシロカイガラムシのみならず、いろいろな昆虫が活動しています。
まずはテントウムシの幼虫でしょうか?テントウムシはヒメアカボシテントウやハレヤヒメテントウがクワシロカイガラムシの天敵として知られています。
そしてクワシロカイガラムシの天敵としては最も知られているチビトビコバチ。
この他にも、雌成虫のカイガラをめくると中にハエの幼虫と思われるウジ虫がクワシロを捕食していたり、カブリダニのようなダニが活動していたりします。
現在静岡県ではこういった土着の天敵を活用して防除を効率的に行う方法を模索しています。
天敵類に影響の少ないと言われているのがアプロードエースですが、施設栽培のみならず露地栽培でも天敵類に影響の少ない薬剤を選択することが重要視されるようになってきました。
さて、一番大事な調査結果ですが標高5mのところでも未産卵の雌成虫率が68%。
32%の雌成虫は産卵をしてはいるものの、孵化卵塊は認められませんでした。(雌成虫100頭を調査)
まとめると下記の通りとなります。
地点1
沼津市船津(標高5m)
未産卵雌成虫数(構成比):68(68.0%)
0%孵化卵塊数(構成比):32(32.0%)
孵化卵塊数(構成比):0(0.0%)
地点2
沼津市船津(標高30m)
未産卵雌成虫数:15(15.0%)
0%孵化卵塊数:85(85%)
孵化卵塊数:0(0.0%)
地点3
沼津市船津(標高50m)
未産卵雌成虫数:59(57.8%)
0%孵化卵塊数:43(42.2%)
孵化卵塊数:0(0.0%)
地点4
沼津市井出(標高125m)
未産卵雌成数虫:66(66.0%)
0%孵化卵塊数:34(34.0%)
孵化卵塊数:0(0.0%)
地点5
沼津市井出(標高135m)
未産卵雌成虫数:97(97.0%)
0%孵化卵塊数:3(3.0%)
孵化卵塊数:0(0.0%)
地点6
沼津市石川(標高230m)
未産卵雌成虫数:81(98.8%)
0%孵化卵塊数:1(1.2%)
孵化卵塊数:0(0.0%)
卵から孵った歩行幼虫は今回の調査では確認できませんでした。
このことから調査地点の防除適期はまだ1週間以上先になると推測されます。
比較的低標高の地点でも孵化が進んでいないことが意外でした。
静岡県病害虫防除所で発信している防除情報によれば、標高3mの清水で孵化最盛予測日が7月14日(防除適期7月16日から数日間)としていますが、今回の沼津市では明らかにこれよりは遅くなると思われます。
いずれにせよ、クワシロカイガラムシの防除適期は畑によっても、その畑の中でも南側と北側、道路に面している場所と畑内側では違いがあります。
ご自身の畑の適期を逃さないように、実際にルーペなどで細かく観察することをお勧めします。