一つ目は宮崎県の森久保さんとおっしゃる生産者の方のククメリスを使ったアザミウマ防除のお話。
日本ではククメリスカブリダニはボトルに入れられて販売していますが、ヨーロッパではティーバッグのような容器に入ったククメリスが売られています。
このティーバッグの中にククメリスのエサであるケナガコナダニも一緒に入っていて、これをキュウリやピーマンの株に吊るすことでアザミウマの防除をしています。
これと同じようなアイデアを実現したのが記事にある森久保さん。
紙コップの中にもみ殻と米ぬか、牛の配合飼料を入れて、そこにククメリスを放すやり方です。ククメリスの製剤にはケナガコナダニも入っているので棲み家とエサを放飼時に与えてしまうわけで、とても合理的な方法だと思います。
紙コップをキュウリ一株につき一個吊るすので、採植本数と同じ3150個必要になり6万円程度のコストアップになってしまうようですが、「殺虫剤の使用回数は、導入前と比べ3分の1以下になり、散布労力と農薬代が減った」と満足されているようです。
次の話題はこれまた宮崎県ですが、綾町でキュウリの有機栽培を行っている水の郷綾施設有機胡瓜研究会のボトキラーのダクト散布のお話。
こちらでは2年前からボトキラーのダクト散布を本格導入したそうです。
ダクト散布は暖房機のダクトに穴を開けて、そこにボトキラーを水和剤のまま投入しハウス全体に飛散させるやり方です。
ボトキラーの効果は、主成分である納豆菌の仲間「バチルス・ズブチルス」が葉や花に住み着き、陣地取りを先にすることで後から侵入しようとする病原菌をシャットアウトする、いわば物理的なものです。
このことは比較的展葉の遅いトマトやイチゴでは、例えば一週間に一度の散布でも効果がありましたが、成長速度が早く葉をどんどん展開させるキュウリの防除はボトキラーにとっては苦手であった理由でした。
しかし、毎日少量のボトキラーをダクトにより飛散させる方法は、展葉の早いキュウリでも安定した効果をもたらすことができ、うどんこや灰色かびに限らず他病害も少なくなるという副次的な効果が期待できるようです。
何よりも何百リッターもの薬液を散布せずに済む省力性と、水を散布しないので湿度が上がらないため病害が発生しにくくなるハウス環境を実現できるのがボトキラーのダクト散布の長所です。
もちろん人畜や環境に対する安全性が極めて高いボトキラーだからこそできる散布方法で、ダクト散布は微生物農薬の処理方法の理想ともいえるものでしょう。