6月貿易統計
中国産野菜が大幅減
目立つ豆・葉物類
財務省が28日にまとめた6月の貿易統計(速報値)によると、生鮮野菜の輸入数量は前年同期比13%減の6万4648トンと大幅に減ったことが明らかになった。6月として7万トンを割り込んだのは2003年以来3年ぶり。
品目別ではエンドウやエダマメなどの豆類が激減したほか、キャベツ・ハクサイの6割減が目立つ。農薬の新残留農薬基準であるポジティブリスト制度の施行で、同制度の違反を警戒した輸入業者が、仕入れに慎重になったことが要因だ。国別では生鮮野菜輸入のうち6割を占める中国産が14%減だった。また1〜6月までの2006年上半期の生鮮野菜の輸入量もまとまり52万3000トン。前年同期に比べ18%減となった。(略)
解説:生鮮野菜の輸入量の減少は、ポジティブリスト制度の影響が色濃く出た形だ。制度違反を恐れた日本の輸入業者が慎重になったことに加え、生鮮野菜輸入量で6割を占める中国政府の厳しい検査や同国内の輸出業者も自粛しているためだ。
しかし、品目別に見ると豆類やキャベツなどの葉物類は減少しているものの、輸入ウエートが高く中国産が大半を占めるタマネギやネギの減少幅は小さく、ニンジンは増えている。加工・業務の浸透に加え、根菜類は葉物に比べ農薬飛散(ドリフト)の可能性が低く、違反が出にくい品目とみられるためだ。さらには、日本国内の野菜相場が品薄高傾向だったため、対日輸出意欲が衰えなかったことも背景にある。
近年の生鮮野菜の輸入量の動向は、2002年に中国産の冷凍ホウレンソウの残留農薬問題で、大きく減った。しかし、わずか3年後の05年の輸入量は過去最高の100万トンを突破。主要国の中国産が安全対策などを進めて盛り返してきた。
市場関係者からは「現状の中国の輸入姿勢は慎重だが、将来的にはポジティブリスト制度に対応して輸出を強めてくる」との意見も少なくない。
一部の国内産地ではポジティブリスト制度による輸入減を「国産シェアを奪回する好機」ととらえ、実需にあった販売提案を繰り広げている。国内産地はこれまで以上に、産地間の協調姿勢を強め、実需に信頼される供給体制を確立することが求められている。(農村経済部・島村一弘)
以上引用
輸入野菜に対する様々な攻防を見るにつけて、1990年代にヨーロッパで火がついた、安価な労働力を背景にした南欧の安い農産物と、オランダ、イギリスなど西ヨーロッパ諸国の既存の農産物との熾烈な競争を思い浮かべます。
西ヨーロッパ諸国は国産の農産物に対する施策として、化学農薬の使用を極力押さえて安全・安心をPRし、「蝶々」のマークを出荷箱に貼り付けるなどしてイメージ戦略にでたわけです。
それに対するスペインを始めとする南欧諸国も害虫が多い気象条件に苦労しつつも、天敵の利用を進めて何とか市場の評価を得ようとして努力を重ねたという構図です。
ただ1998年に静岡県植物防疫協会の視察旅行でスペインの天敵利用を見に行きましたが、当時はまだ使用面積はそれほど多くなく、防除薬剤もなんとランネートとマリックスの混合剤を使っているような状況でした。本当に天敵を使いこなせるようになるのかいな?というのが率直な感想でした。
少し前の韓国産農産物の輸入増の話題(今の韓国は国内消費や中国への輸出が好調で日本向けの農産物は減っている話を聞きますが)や、記事にもあるように中国の農産物が日本市場に多く入ってくるニュースを聞くにつけ、南欧vs西欧の争いと似ていると感じます。
しかし、予想はしていたものの、ポジ制の導入で輸入量が激減するというのも情けない話で、巷でささやかれていた中国野菜は「毒菜」と呼ばれているなどという話も実しやかに感じてしまいますね。
まぁ日本国民の健康が守られるという意味では、危なっかしい農産物は入ってこない方が良いわけではあります。
ただ国内でも残留基準値を超えた農産物も確認されており、「国産シェア奪回のチャンス」を逃さないように、国内の生産者の皆さんにも農薬の適正使用の徹底をお願いするところです。
ラベル:輸入野菜